妊娠と仕事 ~ワークスタイル別でみる生涯賃金~
仕事を辞めるか、続けるか。これは妊娠がわかった時に多くの女性が悩む問題です。ここで大切なことは「夫婦の育児方針」や「家計の状況」、「現在働いている職場の制度」などを十分に確認したうえで、決めるということです。今回は「ワークスタイル別でみる生涯賃金」というテーマで、育児休暇を取得して、正社員として定年まで働き続ける場合と出産を機に退職して、派遣やパートとして働く場合を比較していきます。
- A子さん(29才)
- 短大を卒業後、20歳である貿易会社に正社員として就職したA子さん。29歳の出産を機に仕事を続けるべきか、辞めるべきかで悩んでいます。
3つのパターンで子どもを2人産んだ場合、
A子さんの生涯賃金がどれくらい違うのかを見てみましょう
- 育児休暇を取得して正社員として働き続ける
- 出産を機に退職をして派遣社員として再就職する
- 出産を機に退職をして扶養内のパートとして再就職する
ずっと正社員
生涯賃金 1億6,577万円
- メリット 安定した収入が得やすい(育児休業中も収入が途絶えない)収入が多いため、年金額も多い
- デメリット 部署の異動や残業のリスクがある
- 就職(正社員)
- 初年度年収295万円
- 第1子出産で育児休業
- 産前産後休暇+育児休暇=計1年
- 出産手当金+育児休業給付金=162万円
- 職場復帰 短時間勤務
- 年収292万円(=収入×6/8)
- 職場復帰 フルタイム
- 年収389万円
- 第2子出産で育児休業
- 産前産後休暇+育児休暇=計1年
- 出産手当金+育児休業給付金=177万円
- 職場復帰 短時間勤務
- 年収312万円(=収入×6/8)
- 職場復帰 フルタイム
- 年収416万円
- 退職
- 退職金1400万円
生涯賃金 1億6,577万円
22歳から60歳までの収入+退職金1,400万円の試算
- 年収については平成23年賃金構造基本統計調査の女性の正社員、正社員外の各データを使用。(1万円未満四捨五入)
- 正社員は産前・産後休暇、育児休暇合わせて1年取得、復帰後2年間は短時間勤務を利用したと設定し、6/8の収入にしている。
- 派遣社員は出産を機に仕事を辞めて1年間無職、復帰後2年間は短時間勤務を利用したと設定し、6/8の収入にしている。
- 出産手当金は産休前給料の3分の2を受給、育児休業給付金は育児休業者職場復帰給付金と合わせて産休前給料の50%を受給するとしている。
- 27歳時の退職金は一般的に少額のため換算していない。
正社員→派遣社員
生涯賃金 9,488万円
- メリット 労働時間や業務内容など、自分のライフスタイルに合った仕事を選択できる
- メリット 契約雇用のため、社内の人間関係のトラブルなどに悩まされることが少ない
- デメリット 収入が安定しにくい(交通費が出ない、働いた日しか給料がでない)
- 就職(正社員)
- 初年度年収295万円
第1子出産のために退職
- 派遣社員として再就職 短時間勤務
- 年収186万円(=収入×6/8)
- 職場復帰 フルタイム
- 年収248万円
第2子出産のために退職
- 派遣社員として再就職 短時間勤務
- 年収186万円(収入×6/8)
- 職場復帰 フルタイム
- 年収248万円
退職
生涯賃金 9,488万円
22歳から60歳までの収入
- 年収については平成23年賃金構造基本統計調査の女性の正社員、正社員外の各データを使用。(1万円未満四捨五入)
- 正社員は産前・産後休暇、育児休暇合わせて1年取得、復帰後2年間は短時間勤務を利用したと設定し、6/8の収入にしている。
- 派遣社員は出産を機に仕事を辞めて1年間無職、復帰後2年間は短時間勤務を利用したと設定し、6/8の収入にしている。
- 出産手当金は産休前給料の3分の2を受給、育児休業給付金は育児休業者職場復帰給付金と合わせて産休前給料の50%を受給するとしている。
- 27歳時の退職金は一般的に少額のため換算していない。
正社員→パート
生涯賃金 5,808万円
- メリット 時間や勤務地を細かく選ぶことができるため、子育てや趣味の時間を確保しやすい
- デメリット 仕事の幅が限定されやすく、高い収入を得にくい
- 就職(正社員)
- 初年度年収295万円
第1子出産のために退職
- パート(扶養内)として再就職
- 年収100万円
第2子出産のために退職
- パート(扶養内)として再就職
- 年収100万円
退職
生涯賃金 5,808万円
22歳から60歳までの収入
- 年収については平成23年賃金構造基本統計調査の女性の正社員、正社員外の各データを使用。(1万円未満四捨五入)
- 正社員は産前・産後休暇、育児休暇合わせて1年取得、復帰後2年間は短時間勤務を利用したと設定し、6/8の収入にしている。
- 派遣社員は出産を機に仕事を辞めて1年間無職、復帰後2年間は短時間勤務を利用したと設定し、6/8の収入にしている。
- 出産手当金は産休前給料の3分の2を受給、育児休業給付金は育児休業者職場復帰給付金と合わせて産休前給料の50%を受給するとしている。
- 27歳時の退職金は一般的に少額のため換算していない。
このようにスタートラインが一緒でも、出産を機に育児休業を取得して正社員として働き続けるか、一度退職してから、派遣もしくはパートとして働くかによって、生涯賃金に大きな差が生まれます。また、この生涯賃金による所得の差は年金の受給額にも大きく影響します。現在働いている会社の制度が整っている場合は、まず仕事と育児の両立を検討すると良いでしょう。しかし、勤めている会社の制度が整っていない場合は仕事を続けたくても辞めざるを得ない方もいます。そのような場合は、家庭と両立できる仕事を新たに探してみましょう。ブランクが長くなるほど再就職のハードルは高くなるので、スポットで利用できる保育園などを上手に活用して少しずつでも仕事ができる環境を作っていくと良いでしょう。
正社員での仕事探しが難しい場合でも、将来の正社員採用を前提とした紹介予定派遣やスキルを身につけられるパートやアルバイトを検討するといった選択肢もあります。現在の景気の状況と雇用情勢を考えると、「正社員だから安心」ということはありません。どのようなワークスタイルであれ、常にスキルを磨き、自分の強みを持つことが大切です。
Reviews
- 結婚後、専業主婦→パート→正社員になりました。どのスタイルも良い面、悪い面ありますが、私には働くことが合っているみたいです。自分の納得いくスタイルで生活するのが一番だと思います。(あゆさん 35才 会社員)